私自身、銀行員を辞め転職を考えたことがあります。実際には転職しないまでも多くの社会人が考えたことがあるのではないでしょうか。転職市場においても銀行員の強みは何かということを、自身を振り返りながら、お伝えできたらと思います。
銀行で学ぶこと
まずは法務、税務、財務などの知識。これらは銀行の研修、通信教育、資格試験において強制的に学ぶ環境が整っている。数年在籍することで一般の事業会社で営業マンをする人と比べて圧倒的な知識がついている。
次に金融面、特に融資に関する知識。法務、税務、財務などの知識は自身で学習することができます、学生でも身につけることは十分可能です。ただし融資業務に携わることができる経験、知識は他のどの業界においても身につけることが難しいと思います。
具体的には、融資案件の採上、もしくは謝絶するまでに至る過程です。１つの融資案件を判断する上で様々な過程を経て結論がでます。
会社自体をあらゆる観点(歴史、代表者経歴、SWOT分析、業界分析、市場分析など)で調査、調査した内容をわかりやすく調書にまとめる能力、上位者に説明するプレゼン能力、顧客を説得するための関係性構築から提案力が求められ、それに応えるために能力を向上させていかなければなりません。
数値を示し、論理的に相手に理解してもらうような話し方、話の内容、そしてそれらを言語化することが自然と身についていきます。もともと一定の学力を持っている集団の中で、賢いと呼ばれる人が多くいる環境で競争させられるからです、
最後にお金を扱う業界であり非常に気を遣うことが多く、人間関係においてもストレスは他の業界よりも大きいと思います。また営業に関しても他行との競争が厳しく、スピード、精度共に高いレベルが求められる上に行動力、コミュニケーション能力と営業としての能力値も高められる状況にあります。
端的にいうと攻守ともに強制的に能力を引き上げられる環境が整っているのが銀行であり、かつ同期、先輩、後輩も採用時において学歴、能力共に高いレベルの人たちが揃っている中での競争が始まります。数年間その環境で揉まれることで自分自身のビジネススキル全般を鍛え上げることができます。
転職時において有利な面
転職時に銀行業界にいた人物としてまずは信頼がおけるという意識を相手に植え付けられるという点です。そもそも他の業界よりも有利な状況でスタートします。採用担当の人事においても銀行での経験があることで、その人のビジネススキルが相応に高いものとしての認識を持つことになります。
銀行が合わないなと考える人の中で、営業が苦手、顧客とのコミュニケーションが苦手ということで転職を考えられる方も多いと思います。癖の強い、高圧的な物言いの上司とうまく付き合っていくために平均以上のコミュニケーション能力が必要な場面も多々あると思います。
ただし営業、コミュニケーションスキルというのは、銀行の営業を続けていることである程度自信がつき、一般の平均水準にまでは成長できるというのが私の見解です。まずは短期間で判断はしないでほしいとは思います。
今まで育ってきた環境や学生時代の過ごし方、今までの生き方も強く反映されると思います。もともとコミュニケーション能力が高い、営業が得意、肌にあっているという人には敵わないかもしれませんが、必ずある程度までは人は成長すると思います。
私の身近に2〜３年の間、ずっと営業も事務面も目が出ず、失敗続きの後輩職員がおりました。ある時、上司が変わり営業エリア、担当先が変わった途端、数ヶ月で営業成績が伸びていきました。人って環境と一緒に仕事をする上司、人間関係で能力に大きく差が出るものだと実感したことがありました。
私自身に置き換えても、この上司のために、この上司に出世してもらいたいという思いで一生懸命仕事に打ち込みたいと思ったりします。逆のことも当然思うことがあります。人間は所詮、感情の生き物なのかなと思ってしまいます。
仮に営業面で伸び悩んだとしても、銀行員としての一般知識、金融知識、スキルを高められていれば、一般事業会社で十分通用するレベルになると思います。融資案件の判断を行なった経験で自然と鍛えれている思考と能力は一般事業会社で単純にものを売っている営業と比較にならない能力です。
一般知識をベースに、その顧客に対する課題を分析し、その課題を解決するための解決方法を導き出す。それをさらに内部(上位者、審査部など)、外部(顧客、他行、コンサルなど)に納得性のある説明をするために数値で示し、誰がみてもわかりやすい調書にまとめる。
銀行員として法人の融資業務に携わり経験を積むことは非常に今後のキャリアで有利に働きます。銀行員は専門性が身につかないといわれることもありますが、数年間、営業が苦手ながらも真摯に、一生懸命自身の顧客に向き合って行動することも非常に有益なことでしょう。
銀行認められるだけではなく、広い視野を持って他の業界で通用するような能力を身につけることにもつながっていきます。銀行で自身の専門性を身につけたい、専門部署に異動したい、もしくは一般事業会社における財務、経理部門に転職したいなど、色々な可能性が広がっていくと思います。
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