現在の銀行の役割、差別化については変化してきています。昔は必要な時に、金利を安く、迅速に融資をすることが顧客からも求められていました、現在においては当然の役割になっており、低金利の時代においてどの銀行もできること、すなわち融資のみでは付加価値の低い業務として捉えられてます。
ファイナンスについて
通常の運転資金の融資は長期資金であれば期間5年以内、7年以内などの月々返済がある商品が一般的です。短期資金であれば期間が1年以内で、月々返済もしくは一括返済の商品が一般的でしょう。概ね運転資金の大半がこれらに当てはまっていると思います。
資金対応について差別化をするためには、銀行側がリスクをとって信用力の低い企業に対し、当座貸越などの商品を許容する、もしくはより長期の期間を許容する、例えば期間10年などの一括返済など、資金繰り面の返済負担を軽減できるような金利以外の魅力的な商品を提供することであると思います。
ただしそれらの商品は、一般的に多くの銀行は消極的です。ただし政府系の金融機関などは既存の取引行に先駆けて、リスクをしっかりととって対応したりする例や、メガバンクも自行がメインの顧客等に対してはしっかりとリスクをとって対応する例もみることがあります。
もう一つファイナンスについて金融機関側がリスクをとる方法があります。条件面ではなく顧客の信用力に目を向けることです。つまりベンチャーキャピタルの役割や、スタートアップ企業に対して融資を積極的に行なっていくという方法です。融資というよりは投資という概念が強くなってくるかもしれません。
日本の金融機関が保守的であり苦手とすることです。商業銀行として担保、保証に依存し、しっかりと企業内容を把握せず、事業性を評価しないで融資をしてきたツケかもしれません。今後は日本の金融機関が存続するために投資銀行業務、ベンチャーキャピタル業務の強化が必要となってくるかもしれません。
そのためファイナンスのみで、他行と差別化のために行うことは非常に難しいと感じています。そこで全国的に、地方銀行、信用金庫も含め各行が差別化のために行っているのが、コンサルティング機能を発揮すること、顧客の営業面の力になるように情報提供を行なったりすること、すなわち本業支援に乗り出しています。
本業支援とは
本業支援とは何か、それは顧客の売上が改善する、仕入コストが下がるなど、本業に深く関わる部分いついて銀行として何か提案できないか、役に立てないかと考えていくことだと思っております。
今も昔も銀行でフォーカスされるのは金利です、企業の損益計算書でいうと営業外費用の部分です。それ以外のもっと企業にとって重要な指標についてより銀行員として関わっていくことができれば顧客との信頼関係はより深まるはずです。
そこで本業支援で考えられることを何点か上げていこうと思います。
まずは業績悪化、事業再生が必要な取引先に対して、安易に外部のコンサルを導入するのではなく銀行の支店単位や本部のコンサルティングチームなどを派遣するなど、事業に深く介入していくことです。そしてその取引先の信用力を改善させていくことです。これは双方にメリットが非常に高いと考えます。
業績悪化、事業再生が必要な企業に対して最も必要なことは、経営者、経営陣の意識を変えること、債権者である銀行が本音で、腹を割って対話をすること、経営者に自身の会社と真剣に向き合わせることだと思います。
意欲、改善意思がある企業に対しては銀行側も当然しっかりと理解を示し、一緒に走っていくというスタンスが必要になってくると思います。
次に営業面と仕入面、経費面のアドバイス、より良くするための情報提供、銀行のネットワークを駆使したビジネスマッチング業務の強化です。
営業面では売上伸ばすための販路拡大支援です、全国の取引先、海外の現地法人等とのビジネスマッチングなどがあげられると思います。
仕入面や経費面では、取引先の紹介に加え、人件費などの経費削減に必要なシステム関連の情報提供や新たな外注先等の紹介があげられると思います。
最後に不動産情報、リース、保険、税金関連等、企業経営に関わるあらゆる悩みを解決すること。これらの中で銀行が業務として行うことができないものも当然あります、いかに銀行のグループ会社や提携している事業会社を駆使して対応していくかがあげられます。
これらをしっかりと銀行が取り組んでいくための土台、根底にあるのはその取引先の事業をしっかりと理解していることです。もしできていないのであれば全く見当違いの提案や、しっかりとした企業との対話が成り立ちません。
そして更にこれを突き詰めると、銀行の経営としての方針は打ち出すのは当然ながら、営業担当者にいかに浸透させることができるか、そして取引先との距離が最も近い営業担当者の真の実力が問われます。
業界知識、普段の勉強量、意識、顧客のためにという想い等が非常に重要になってくるのは言うまでもないありません。私自身もそれらのことを忘れずに業務に取り組みたいと思います。
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