銀行はデリバティブ商品を販売することができます。企業に対し提供する主なデリバティブ商品は3種類です。金利に関するものと、通貨に関するもの、原油や天候などの商品に関するものです。それぞれ必要最低限の内容についてご説明します。
金利スワップ
まず金利に関するものは、金利スワップと呼ばれるものです。スワップという言葉の意味は金利を交換するということです。契約を締結し、銀行と融資を受けている企業が金利を交換します。
上記の内容を具体的にご説明します。銀行が融資する際に変動金利で貸出を行うか、固定金利で貸出を行うかの2つのパターンがあります。融資を変動金利で行った後に、固定金利にすることができる。また逆に融資を固定金利で行った後に、変動金利にすることができます。
金利スワップのメリットとして変動金利の上昇局面を回避することができるという点があげられます。変動金利で調達した際、今後金利が上昇するという企業側のリスクが内在しています。それを金利が今後上昇しそうと考えた時に、金利スワップという商品を活用し固定金利に変更することができます。(厳密には変更ではない)
逆に固定金利で調達した際、今後金利が下落するというメリットを受けることができないというリスクが内在しています。そのため逆の契約を締結することも可能ですが、現状の市場動向からも実務上においては多くはないでしょう。
現時点においては低金利の状況といえるので変動金利で調達を行い、今後金利が上昇するという企業側のリスクというものを回避する手段としてよく、金利スワップという商品が使われます。
また金利スワップの利点として、オーダーメイドによる商品設計が可能という点があります。貸出金額の内、半分を変動金利、半分を固定金利に設定したり、貸出期間の半分だけ変動金利に設定し、半分は固定金利に設定するなど、変動金利と固定金利の両方のメリットを享受できることも考えられます。
通貨スワップ
次に通貨に関するものは、通貨スワップと呼ばれるものです。言葉の意味は通貨を交換するということです。契約を締結し、銀行と融資を受けている企業が通貨を交換します。
上記の内容を具体的にご説明します。銀行と企業がドル、ユーロなどの外国通貨と企業が円をあらかじめ決められたレート(1ドル=110円など)で定期的に交換するということです。契約を締結し、交換するレートや交換する時期、頻度、トータルの期間などを設定します。
銀行がドル、ユーロなどの外国通貨、企業側が円を交換することが輸入を行なっている際に行う通貨スワップです。一方で逆が輸出を行なっている企業が行う通貨スワップです。
私の知る限り、為替の流通量からしてドル、ユーロなどのクーポンスワップはよく目にします。それ以外のマイナーな通貨については理論上、クーポンスワップの商品設計は可能でしょうが、積極的に推進、提案している銀行は見たことがありません。
通貨スワップを行うメリットは、通貨のレートを固定化することができるということです。例えば輸入を行なっている企業は、原材料などの変動で仕入価格が変動する他、外国為替の影響も受けており、損益上の変動要素が多くあるのでその外国為替部分のリスクを回避することができるということです。
外国為替のリスク回避手段は主に為替予約(大半が1年以内の為替レートを固定化)、通貨スワップは(2年以上の為替レートを固定化)の2種類あります。対義としてよく使用されるのが、スポットレートです。
企業としてどのくらいの割合をスポットレートで対応し、どのくらいの割合を為替予約、クーポンスワップなどの商品でリスクヘッジを行うかはよく話題に出ます。
商品デリバティブ
最後に商品に関するものは、商品デリバティブと呼ばれるものです。多くの種類がありますが、その中でも天候デリバティブと原油ディバティブがよく提案されるものかと思います。
天候デリバティブは、雨、雪など悪天候が続くと不利に働く業種、例えばゴルフ場、スキー場の運営会社。逆に晴れが続くと不利に働く業種、例えば傘の売っている会社。
それらの会社に対し、年間で何日間雨、雪が降らなかったらなどをあらかじめ契約で設定し条件を満たした時に保険料、もしくは保険料と同等のものが支払われるというものです、天候に関する環境リスクを回避できるという利点があります。
原油デリバティブは、原油の変動が大きく経営に関わる業種、例えば航空会社、運送業などに提案する商品です。常に変動している原油価格をあらかじめ契約により固定化するというものです。これらも金利スワップや通貨スワップと同様に、原油価格の上昇リスクを回避できるという利点があります。
大手企業では原油デリバティブはかなり取り組みを行っている例があります。証券会社なども積極的に提案、売り込みなどを行っており銀行以外で契約締結を行なっていたりします。
以上が主なデリバティブ商品になりますが、あくまでもこれらの商品は企業のリスクヘッジを行うためのものであり、損得で話をしてはいけません。いくら儲かるなどはもってのほかです。営業担当者は知識以外にも、顧客にとって真に有益な提案ができるようになるべきです。
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