ABL (アセットベースドレンディング)とは

専門知識

ABLとは経営者は当然、銀行員の中でも耳慣れない言葉かもしれません。地方銀行、信用金庫などにおいては行内での取り組み自体が不可能だったりすることもあったりします。実際に自身が担当者として新規でABLを組成した方も少ないと思います。斬新な資金調達の手法ではありますが、問題点、金融機関側のリスクも非常に大きく、高度な知識が必要になってくるものです。

ABLとは

ABLとは何か、一言で言うと流動資産を担保として金融機関が融資を行うという手法になります。具体的に流動資産とは、預金、売掛金、受取手形、棚卸資産になります。

通常、金融機関が担保を取得するというと何を思い浮かべるか、不動産ですね。不動産は貸借対照表上、固定資産に分類されます。現在、金融機関が担保として取得しているものの大半は、固定資産に計上されているものになります。

流動資産としてよく担保取得されるものとしては、根質として定期預金があげられらますが、それ以外はほぼ目にしないと思います。

固定資産に計上されるものとしてあげられるるものは、土地、建物などの不動産、車輌、機械設備、有価証券、保険積立金などです。担保の90%以上になるのでは無いでしょうか。

さて話を戻すと、ABL=流動資産を担保取得を言い換えてよく言われることがあります。それは会社の商売自体の流れを担保取得するということです。

商売自体の流れとは、販売するための商品が棚卸資産となる、その後棚卸資産に計上されている商品が売れると売掛金となる、売掛金となったものはお金が入金されると預金に計上される。

この事業サイクルが常に会社では起こっています。そしてその事業サイクル長い会社であれば半年、短くても2〜3ヶ月の期間があるということが大半です。すなわちその期間だけ運転資金が必要となってくるのです。

通常、その運転資金はどのように調達されているのか、無担保で調達できる会社もあれば、そうではなく保証協会を利用したり、不動産の担保を提供したり、商売を回すために他の資産を提供しています。

このABLは、提供できる担保=固定資産がない(もしくは価値がない、他の調達に利用してしまっているなど)会社にとって、新たな資金調達の手法として確立されています。

ただし、一般的にどの会社に対しても提案、利用できるものではありません。金融機関側のノウハウ不足、リスクが許容できないなどの理由があるからです。

具体的な事例と金融機関のリスク

具体的な例として、養豚、養鶏、ワイン、日本酒、鉄、アルミ、水産物などの棚卸資産と売掛金に対して登記を行います。そして売掛金の入金口座を自行の口座に指定し、質権を設定するというものです。

棚卸資産+売掛金+預金口座を一連で担保取得する以外にも、売掛金+預金口座のみ担保取得する場合や、登記を行うのではなく、登記を留保することで債権を担保するような、顧客側の負担の少ない形で組成することも可能となっています。

棚卸資産も重要な価値のあるものとして、評価をすることが可能です。棚卸資産の内容を評価する専門の機関もあり、十分に活用できると思います。

不動産以外の、在庫や債権(売掛金)に対しては東京都中野の法務局でしか登記の手続きができないので留意が必要です、また棚卸資産や債権に登記がされているかどうかを調べることも可能です。

また日頃から、銀行員としての知識、スキルを高める、差をつけるためにも棚卸資産の内容に着目するのは非常に良いことです。この会社の棚卸資産を担保として取得した際にはどの程度の評価が出るのか、棚卸資産の内容に着目し、興味を持って経営者と話すとその会社が行っている商売の深掘りができるでしょう。

当然工場見学、現場を見せて下さいと、話が盛り上がっていくことになります。不動産担保を取得する機会は非常に多く、勉強する機会も多いですが、それ以上に会社を知るという意味では流動資産に着目した方がより深く顧客のことを理解することができると思います。

新たな資金調達の手法としてあるにもかかわらず、金融機関に浸透しないのはリスクが高いからです。まずは担保の価値が不動産と比較すると低い、換金性が悪い、商品によって簡単に移動されたり、陳腐化など個別のリスクがある、定期的なモニタリングなど金融機関が管理していく費用が高いなどです。

金融機関にノウハウがないなどの理由もありますが、実務上においても少額の資金調達においてABL組成を行うには、採算が合わなかったり、他の担保取得が可能であれば、そちらを優先してしまう、リスク許容するためのコストが顧客と折り合いにくいなどで断念することも多いと思われます。

金融機関にとってABLの取り組みはモニタリングなどをしっかり行うことで商売の流れがより把握できる、保全策として流動資産を活用できるなどのメリットがある一方で、不動産担保とは違い、担保の陳腐化、劣化、換価性などのリスクもあり、取り組みの際には高度な知識と判断が必要になります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました