不況業種である飲食業について

専門知識

不況業種にはいくつかございますが、その中で私がまず頭に浮かぶのは飲食業です。銀行での融資相談を受けることも多く、これから開業する方にも気をつけて欲しいことや頭に入れておくべきことをお伝えします。銀行への融資相談で最も多い業種の1つが飲食業でもあります。

事業自体にそもそも限界あり

1点目はあらゆる業種の中で最も参入障壁が低い、言い換えると誰でもできてしまう。開業資金さえあれば、最も簡単に独立できるのが飲食業です。地域によりますが、一等地ではなく居抜き物件等で数坪のラーメン屋などであれば200〜300万程度で可能ではないのでしょうか。

2点目は1点目と関係してきますが、競争が厳しい。常に同業他社の脅威にさらされている。今日の売上、今月の売上が、読みにくい。マーケット、市場として急激に変化する可能性が高いともいえます。

3点目は差別化しにくいということです。差別化で最も思いつくのが、味だと思いますが。基本的に真似されますし、消費者にも飽きられます。みなさん、毎週その味を求めて必ず行くレストランなどどのくらいあるでしょうか?

この3点目が事業の限界につながるのですが、本場イタリアで修行、有名ホテルで料理長の経験あり、などの自分自身の経歴をもとに、こだわりにあるお店を開店することがあります。ただ自身が提供できる料理には限界があり、同じ味を利益を追求しながら多店舗展開をしていくことは非常に困難になります。

超有名店、超高級店、有名シェフの店で、チェーン展開をしている店はほぼ存在しません。事業を拡大するためには、材料費、人件費、単価、回転率などを緻密に計算していかなければなりません。こだわりの味では事業は発展しません。

職人、シェアの思考ではなく、経営者のセンス、能力が必要となります。それを勘違いしていることがよくあります、一度食べてみてあくださいとよく言いますが、味ではなく1食の利益率が大切になっていきます。

1人暮らしの方であればよく自分がリピートする、毎週行く店はどのような店でしょうか。某牛丼屋など、大手の飲食店が大半だと思います。それらを踏まえると飲食業として事業を拡大、展開する上で意識することがみえてくると思います。

まずは細く長く続けることを目指す

飲食業を事業として継続して成長させることは、1つしかありません。何らかの方法で店舗を増やすしかないのです。大体がフランチャイズ展開か、自社運営の店舗を増やすことだと思います。

フランチャイズは実績、ネームバリューが必要になります。大体が大手やブランド力のある飲食店に限られます。次の自社運営の店舗を増やすための資金を、全て自己資金で行うことができればその飲食店は成功といえますが、大概は借入を行います。

飲食店の銀行の見方は、利益が薄く、自己資本が積み上がらない。店舗数を増やすために借入金が増えていく。基本的に飲食店の既存店舗については売上は年を追うことに減少傾向になります。そのため、売上を維持するために新規店舗を出すという悪循環に気付いていない経営者もおります。

大手の飲食店は、出店のための借入金返済を3〜5年で回収する計画を立てます。その期間で回収できないのであれば、その場所への出店は採算が合わないと考えます。既存店舗において5年以降の急激な伸びは見込まれないのが事実なのです。

ロードサイド、ショッピングセンターのテナントなど知らないうちに名前が変わっていたり、運営会社が変わっていたりなど、生活していて身近に気づくことも多いと思います。

飲食店を開店した時に欲をかかないことです、1〜2年売上が順調に推移したりするとすぐに勘違いする経営者が多いです。慎重に物事を進めて下さい。3〜5年で投資回収が可能であること、自己資本比率が年々順調に積み上がっており、新規店舗出店時において少なくとも2〜3割の自己資金が投下できることです。

派手な生活はしないで下さい。接待交際費、役員報酬、旅費交通費、車輌費など、経営者として自らを律し経費をしっかりと管理できるか、収支悪化時においてどれほど身を削って削減努力ができるかなども銀行員はみています。

コロナ禍で飲食店の倒産も増えつつあります。不況時に意外と強いのが、運営している店舗が少なく、固定費が少ない飲食店です。夫婦2人のみでやっている定食屋等は、このような時においてもほぼ倒産しませんし、既に借金などもないでしょう。

全て自己資金であるのなら話は別ですが、急激な事業拡大は飲食業においては絶対タブーです。そして繰り返しになりますが、飲食業は味やメニューのこだわりよりも、経営者の計数管理能力が高い方が上手くいく可能性が高いです。

もっと極論をいってしまうと料理を自分で作れなくても良いのです。飲食店の経験などバイトで数年やれば現場のことは理解できると思います。それよりも、一般の事業会社などで働き、経理や経営に関わっていった方が飲食店を開業、展開する上でも役立ちます。

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